浮かぶキューブの中に・・・その7

  スポットライトがキューブの方に移動すると

  ゆっくり降下しているキューブの布が少し盛り上がり

  地上1メートル位のところで止まった

  

  と・・・バッと布が宙に舞った!

  その瞬間、観客達はその目を疑った

  
  なんとキューブには、ステッキがマジシャンが見つけた時の状態で

  突き刺さっていて、その先の透き通った小さな四角い箱の中に

  小さな彼の姿があったのだ・・・・


  

  観客達は、キューブとモニターを交互に見入っている

  
  
  彼は、満面の笑みを浮かべながら手を振った

    
  「ハーイ!皆さん・・・・私は、ここですよ~♪」

  と、キューブの中からマイクを通して語りかけてきた

  その声に、観客は総立ちになり、場内は今まで以上の拍手と大歓声に包まれた・・・

  彼は、いつものように声援に応えて、両手をひろげお辞儀を繰り返した



  驚いているのはアシスタント二人も同じだった・・・・が、

  何人かの観客をステージに上げ、小さくなった彼の存在を確認させた


  
   キューブに向って拍手し、首を傾げながら観客がステージを降りると
  
  「さあ・・・早いとこ、この小さな箱から出してくれよ!」

  と、彼は、冗談ぽく云うとキューブの中のステッキの先を掴んだ

  

  アシスタントは、指示通りにステッキの上からキューブが見えなくなるように

  再び布を掛けると、その上からステッキを掴む・・・・


  
  照明が少し暗くなり、ボックスのドアも閉められると

  場内がシーンと静まりかえった・・・・・


  
  「さあて、ご帰還しますよ!・・・・・


  ワン・・・・・ツー・・・・・・・・・スリー!!」


  
  と、同時にアシスタントは、布共々ステッキを引き抜くと

  ボックスに向って振った


  
  が、しかし・・・・彼の姿は、キューブの中にあった・・・・


  
  彼は、少し慌てたものの冷静さを装い

  「おいおい、今のはリハーサルかい・・・?

    もう一度頼むよ・・・・この中は、暑いんだよ」

  おどけた口調で言った


  まさか彼がほんとうにキューブの中にいるとは思ってもいなかったアシスタントは、

  焦ってはいたが、云われるままに急いでキューブにステッキを挿した



  再び暗くなると、彼はカウントを数えた


  「ワン・・・・ツー・・・・・・スリー!!」


  今度は、布が掛かっていないので中は、丸見えだった

  
  ステッキを引き抜くと同時に、彼はキューブの天井にぶつかって落ちた

  またしても失敗!!


  
  その様子に観客は、これもショーの一部だと一斉に笑ったものの

  彼が焦りの表情に変わっていく様子に、アシスタント同様戸惑い

  会場は、ざわついた雰囲気になっていった・・・・



             ・・・・・・・最終回へつづく