浮かぶキューブの中に・・・・その6

  
 驚いたのは観客だけではなかった・・・・

 
 二人のアシスタントも同様だった。


 何しろ、彼女達ですら今回のマジックに限っては、段取りと仕掛けの打ち合わせだけで

 種もわからないし、どんな事が起きるかさえ聞かされてなかったのだから・・・。

 
 
 まあ、種はキューブそのものにあるわけで、マジシャンも教えなかったのも

 当然だろう・・・・

 
 ただ、マジックとしてやるからには、種があるようにも見せなければならないわけで、

 それはそれで、逆に難しい事であったりするのかもしれない。



 
さあ、いよいよ最後のマジックが始まろうとしている・・・・



 彼が、再度観客の何人かに、キューブに仕掛けがない事を確認させている間に

 ステージには、彼が入るであろうボックスが運ばれて来ていた。



 そうっ!!

 最後は、彼自身がボックスからたった10センチ四方のキューブの中への

 瞬間移動に挑戦するのだ!


 

彼は、ウサギや鳩ではなく、より大きな自分自身を移動させようと考えたのだ



 これは、まさに前代未聞の人間縮小瞬間移動マジックだ!!




 場内のざわめきが収まり、静かになった・・・・

 


 アシスタント達は、ボックスにも仕掛けがない事を確認させ、

 浮かんでいるキューブに布をかけると

 マジシャンのステッキを持った手に手錠を掛け、大きな袋に足元から入れると

 手際よく袋の入口を縛り、彼をボックスの中へと移動させた。


 

「それでは皆さん!・・・・しばしのお別れです」

 と袋の中から彼が言うと、ボックスの扉が閉められ、鍵が掛けられた。


  このあたりは、お馴染みの消失マジックだ


  

  場内の照明が、暗くなりボックスにスポットライトが当ると

  中から彼は、カウントを数えた。


 「ワン・・・・・・ ツー・・・・・・ スリー!」


 

  と、パッと場内が明るくなり、アシスタントはボックスの鍵を外し

 扉を開けた・・・・・

 

  そこには、外された手錠と袋とロープだけ・・・・

 
 もちろん、彼の姿は消えていた・・・・・・・・



               ・・・・・・・・・・さらに、つづく